甘い鎖にとらわれて。


*
 ·





それは玄関の扉を開けたとき、起こった。




「おはよう、柚原さん」 


「………」



パタン、と閉めて背を扉に預ける。



……なんで?



あれ……今私起きてるよね。うん、ほっぺた痛い。


なんで朝から制服姿のきらきらスマイルが見えたの?


背から「おーい」と響く声が、現実味を帯びさせてくる。


……まって、嫌な予感がする。



おずおずともう一度外へと踏み出して見ると、そこにはもう見慣れた綺麗な顔。


相変わらず王子様みたい、と思っていた頭を放り出して問いかける。



「……どうして家の前に?」


「一緒に学校行こうと思って」



嫌な予感がほんものに変わった瞬間、カチンと固まる。
もちろん、悪い意味で。


……やっぱり昨日、夜おそくてもインターホン押せばよかった。



「……私を殺す気なの?」


「俺別に殺意は持ってないよ?」


「じゃなくて、私があなたのファンにって言う意味!」


「え?あー……なるほど」



< 20 / 66 >

この作品をシェア

pagetop