甘い鎖にとらわれて。
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それは玄関の扉を開けたとき、起こった。
「おはよう、柚原さん」
「………」
パタン、と閉めて背を扉に預ける。
……なんで?
あれ……今私起きてるよね。うん、ほっぺた痛い。
なんで朝から制服姿のきらきらスマイルが見えたの?
背から「おーい」と響く声が、現実味を帯びさせてくる。
……まって、嫌な予感がする。
おずおずともう一度外へと踏み出して見ると、そこにはもう見慣れた綺麗な顔。
相変わらず王子様みたい、と思っていた頭を放り出して問いかける。
「……どうして家の前に?」
「一緒に学校行こうと思って」
嫌な予感がほんものに変わった瞬間、カチンと固まる。
もちろん、悪い意味で。
……やっぱり昨日、夜おそくてもインターホン押せばよかった。
「……私を殺す気なの?」
「俺別に殺意は持ってないよ?」
「じゃなくて、私があなたのファンにって言う意味!」
「え?あー……なるほど」