甘い鎖にとらわれて。
どうやら彼も自身の人気ぶりについては理解しているようで。
私はうんうんと頷いて、さり気なく横を通ろうとする。
だけど引き止めるように、ぽんと肩に置かれた手。
「……でも俺、引っ越してまだそんなに経ってないから道覚えきれてないんだよね……」
「……う」
……そう、だった。
痛いところを突かれる。これじゃ同行しない私の方が悪いみたいな気持ちになる。
彼はそのことを分かっていたのだろうか。
「俺迷子になるかも」
「……うぅ…」
加えてしゅんと沈んだ声で、困った顔を浮かべられたら、完全に私は降参だ。
「……今日だけなら、案内するから……ちゃんと道覚えてね」
「ありがとう」
ぱっと明るい微笑み。だけど反対に、私はこれから起こることが恐ろしくてたまらない。
「大丈夫だよ、みんな気にしてないって」という言葉が飛んできたけど、私にそれは効果がない。
……大丈夫。私はいつも朝早めに家を出ているから、そんなに生徒たちに見られないはず……!