甘い鎖にとらわれて。
この人には、調子がみだされてばっかりだ。
目がまわろうとしていたところで、視界の端に同じ高校の制服を見つけて、はっとする。
「ちょ、なら私が前歩くから……」
「まぁいいでしょ、お隣さんと交流を深めるってことで」
「……」
手の力が緩んで、ゆっくりと離される。
だけど、隣にいるだけじゃなく、歩くスピードまで私に合わせて。どうやら譲る気はないみたい。
肩にかけている鞄の持ち手をぎゅ…と握る。
なんだかくやしい……けど、さり気なく車道側を歩いてくれていることに感謝して。
周りから見えづらいように隠してくれていることに口角をあげて。
「……私が親衛隊の皆さんにぺいってされちゃったら責任取ってね」
「了解」
しっかりと少しの文句だけを言っておいた。
「……ていうか、親衛隊が本当にあったとは」
「知らなかったの?」
「うん。噂だけね」