甘い鎖にとらわれて。
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「これ、落ちたよ」
「え?……あ、ありがとう…」
いつの間にか廊下に落としていたハンカチを拾って差し出してくれたのは、つい先日隣人になった彼。
どうやら移動教室の際に落としていたみたいで、それに気づかなかった私に後ろから声をかけてくれた。
受け取ろうとしたら、突然「あ、」と彼が何かを思い出したようにつぶやいた。
「……なに?」
一瞬口を開いたかと思えばまた閉じられたから、不思議に思って首をかしげる。
途中で無理やり言葉をきったみたいだった。
「ごめん、なんでもない」
「……そう?」
すこし訝しげな視線をなげたけど、にこにこの微笑みを向けられていては諦めるしかなさそう。
「そっか」と言って、その話はそれで終わり。
……それよりも、やっぱり。
この人の微笑みに、何か違和感を覚える。