甘い鎖にとらわれて。



「…ちっ、…お前もかよ」



初めて、男の人が言葉を発した。


"も"という言葉にどこか違和感を覚える。
だけど深月くんは動じずに、



「……そーだよ、悪いけどちょっと寝てろ」



その言葉からあとは、速かった。



一瞬なにが起こったのか分からなかったけれど、深月くんが相手を気絶させたという事だけは理解できた。



「ーーさ、帰ろっか柚原さん」


「……っ…うん、」



どうしてだろう。


恐怖からは解放されたのに、どうしても胸が騒ぐのは。


嫌な感じが拭えないのは、なんで。



足がすくんでいた私の手を引いて、一緒に歩いてくれている深月くんをチラ、と見る。



「…っありがとう……助けてくれて、」


「いーや別に、……大丈夫?」


「………うん」



人当たりの良い笑顔は、今では違和感そのもの。


そんな姿にすこし安心したのも事実……だけど。


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