甘い鎖にとらわれて。
あっという間に、アパートに着いて。
それぞれドアノブを引こうとしたところで、私がそれを引き止めた。
「っあの、深月くん、」
「ちょっと入っていけば?まだ手震えてるし、……聞きたいことあるんでしょ」
「……っ、」
まだ少しカタカタと震えていた手を、見抜かれていたみたい。
それに私が聞きたいことを、彼は知っているみたいだった。
「入っていけば」と示されたのはついこの間引っ越してきたばかりの彼の部屋。
「……うん」
パタンと閉じた扉。
心臓はずっと、嫌な音を立て続けていた。
*
·
「ーーはい、これ」
「……ありがとう」
手渡されたのは、マグカップに注がれていたホットミルク。
両手で持つと、冷え切っていた手がじんと熱を取り戻した。
ひとくち、ごくりと喉を通るとほっと息をつく。