甘い鎖にとらわれて。
ーーこの世界には、"ケーキ"や"フォーク"と呼ばれる人たちがいる。
ケーキは「美味しい」人間のこと。
肌、涙、血液ー…ぜんぶが甘くて、極上の存在。
フォークはケーキを「美味しい」と感じる人間のこと。
味覚がなくて、ケーキの甘味だけを感じられる存在。
なんでも、フォークにとってケーキは最高のご馳走なのだとか。
ケーキは始めから決められている先天性。
フォークは後からその存在になる後天性。
どちらも出会う確率は稀で、ほとんどが普通の人間。
……なのに、まさか私がケーキなんて。
ケーキは自分からは自身がケーキだと気づくことは出来ない。
気づく方法は、フォークに狙われること……それだけ。
ということは、さっきの男の人もフォーク。
あのまま深月くんが助けてくれなければ、私はもうすでに食べられていたかもしれないと思うと、ゾッとした。