甘い鎖にとらわれて。
まるで容赦がない。選択肢を与えてくれない、彼の"裏"といえる冷たい瞳に、奥歯をゆっくり噛み締めた。
だけどここで、何も考えずうんと頷くほど、私は彼を信用できない。
「……具体的には?」
逆らえば、私の明日はないかもしれない。
ふるえる手を隠して、できるだけ強い顔をする。
「そうだね……俺が柚原さんを食べないのは当然。そして君を他のフォークたちから守るよ」
「……え」
フォークが、捕食対象であるケーキを守る?
聞いたこともない話。そもそもつい数分までは縁もゆかりも無いものだった。
警戒を解かない私に、深月くんは王子様の表情で、小さい子をあやすみたいに話し出す。
「通常フォークはケーキに出会ったとしても、すぐに食べようとは思わない。だけどたまに、すぐに食べようと襲う者がいる」
さっきの人がいい例かな、と平然と語るけど、私にはそんな余裕はない。