甘い鎖にとらわれて。
「それに俺の本性知ってるのはあの学校では柚原さんだけだしね」
「……だから、私が彼女のフリをしろと…?」
「そーいうこと」
にこ、と微笑まれても、私は戸惑うことしか出来ない。
フリ、ということは学校中に私たちが付き合っていることを言いふらすということ。
校内での私の平穏は、絶対に崩れ去る。
……だけど。
「……っわかった、受けるよ…その契約」
「良い覚悟だね」
ーーケーキである私が、明日に食べられていたとしてもおかしくない。
生きられるなら、なんでもいい。
「じゃあ契約成立。柚原さんは明日から俺の"彼女"……ね」
「……うん」
後悔はない。大丈夫、……っだいじょうぶ。
どくどくと落ち着かない心臓あたりを、服ごとぎゅっと掴む。
視線だけをうろうろと彷徨わせた。
「……あれ、そういえば深月くんって一人暮らし……なの?」