甘い鎖にとらわれて。



……なんて、この人に言うのはなんだか癪だから言わないけど。



「なんでそんな不機嫌そうな顔してんの?」


「……べつに、これが普通だもん」


「そー」



……ていうか、いつまでこの状態なんだろう。


距離が近すぎる。
いくら腹黒だからといったって顔が良いのには変わらないのだから、さすがに脈は速まる。


いろんな意味で、心臓がもたない。



「…っあの、」


離れて、と言う前にもう一度クマを擦られる。

こする、というよりも、撫でるに近い優しさだった。



「お前顔はかわいーんだから、いつものままでいいんだよ」


「……え」

 

その後、ゆるりと彼が離れて。



「まあ、顔がちょっと違うからってフォークに食われる危険性は変わんないしね」


「〜っ」



今、なんて……かわいい?

意味わかんない。これは"彼女"に対してだから?

もう恋人ごっこは始まってるの?



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