甘い鎖にとらわれて。



一瞬びっくりして、その勢いで思いっきり視線を反らして、すぐに後悔した。



……私、あからさますぎる。



分かりやすい行動に、かあっと赤くなって俯いた。



「どうしたの莉乃?」


「ううん、……なんでもない」



でも、自分から見ておいてこの態度は失礼かも。


そう思って、おずおずと顔を上げる。


数秒たってもう一度目を向けると、ふ、と微笑む彼が映った。



それは一瞬の出来事で、瞬きしたら今度は友達と話している深月くんの姿。



……気のせい?



だとしたら、一人で勝手にいろいろ……恥ずかしい。


彼が、教室の隅でひっそりしている私を見るわけがないのに。



そう思って、推しを語ることに花を咲かせている実帆ちゃんとの会話にもどった。




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