甘い鎖にとらわれて。



「そんな呑気に入ってる場合じゃないよ実帆ちゃん、私今日が命日かもしれない」


「うどんの麺伸びるよ?」


「もうそれどころじゃない……」



消え入りそうな声と共に両手で顔を覆う。


食欲がなくなっていく側で目の前に座る彼女は、ずぞぞっと美味しそうな音を立てながらラーメンを食べていた。


いい食べっぷりで、見てるこっちが気持ちいい。


私もやっぱり食べたくなって、割り箸をパキリと割った。


実帆ちゃんは一口食べたあと、ごくんと飲み込んで。



「まあ、私も最初は『莉乃が透夜様と付き合う!?うそでしょ!?』って疑ったけどさ」


「う、」


「もう堂々と構えとけば?どっしり。『彼女ですが何?』みたいな!」


「実帆ちゃん楽しんでない?」


「まっさかあ。莉乃可愛いから大丈夫だって!」




この時に聞く"かわいい"ほど不安なものはない。



< 63 / 66 >

この作品をシェア

pagetop