甘い鎖にとらわれて。


「……あ、そうだ。よかったら食べてくれない?」


「……え?」


「俺、甘いもの苦手でさ。もらってくれると嬉しいんだけど……」


ぱち、と目の前に星がとんだ。

意外、というわけじゃない。
彼が作ったものをくれる、という提案に驚いているだけ。


しかも、よく知りもしないただのクラスメイトに、なんて。
彼が気さくな性格だからかな。


……あ、でも、



「ごめん、私も甘いものあんまり得意じゃなくて……」



今日の五限目の出来事を思い出す。
私は甘すぎるものは苦手だから、こっそり砂糖少なめにしたんだっけ。


そのことを彼に話すと「俺も今度からそうしようかな」とつぶやいていた。



「え、甘いもの苦手なんだ?意外だなあ」


「……そんなに?」



今日は"意外"という言葉をよく聞く日だなあ。
私ってそんなにゆるっと見えるんだろうか。


「私って甘党な顔してるの?」ってたずねると、なぜか笑われてしまった。


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