冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
「お泊まり。おふろいっしょする? みーちゃのおふとんわけてあげう」

手と口元を拭いてあげると、美菜ちゃんは古典と首を傾げた。

うっ。可愛い……

先ほど習った目線と首の角度を実戦されて、改めてなんて利口なのだと恐れ入る。

「あ、あの、美菜ちゃんごめんね。今日は難しくて」

「ええー」

美菜ちゃんは今にも泣きそうになり、わたしは困ってしまった。仕事と子育てとの両立に悩むお母さんたちは、こんな気持ちなんだろうか。

可愛い。ずっと一緒に居てあげたい。
でも難しい。

「凛ちゃん、お泊まり無理かな? わたし明日は取材があるだけで、美菜も連れて行けるの。朝はまた送るから」

「それじゃあ、お手伝いに行ってるのに負担が増えませんか?」

「今はこの子の預け先がないから仕事セーブしてるの。もし凛ちゃんが来てくれたら、なるべく早く仕事をもどしたいと思っていて……生活のために稼がなくちゃっていうのもあるけど、やっぱりモデルって仕事が好きなのよね。

自分がやりたいことを、子供のせいにして諦めたくないの」

言い切った雅さんはとても格好よかった。
意志がはっきりしていて行動力があって、こんな女性になれたらと憧れる。

「では、今夜はお邪魔させて貰っていいですか? いまの仕事もなるべはやく節目を迎えられるようにしますので、今後のことも是非お願いしたいです」

わたしも、目の前にチャンスがあるなら掴みたいと思った。

諦める理由ばかり考えていないで、せっかくなので全力でやらせて貰おう。

頭をさげると、「契約成立ね!」と雅さんは手を叩いた。
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