冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
それから、住み込みで家政婦を始めてから一か月ほど経った。
まだまだ覚えることは多いが、なんとかやっていけている気がする。
家を出るのも初めてで、ひとり暮らしもしたことがないわたしがいきなり人様の家で寝食をするなんてと緊張していたが、藤堂家は、ほんとうにみんな親切ですぐに緊張もほぐれた。
雅さんが用意してくれた部屋は、十二畳の広さにシャワーとトイレもついている。
小さな冷蔵庫に、化粧台にテーブル。
ホテルのように一部屋になんでも揃っていて、家政婦が使うとは思えないほど豪華な部屋だ。
クイーンサイズのベッドの寝心地も、お姫様かと思うほど最高だ。
仕事に関しては、食事はいつも喜んで貰えるし、美菜ちゃんとは仲良くできているしで、とにかく楽しくてやりがいがあった。
空き時間には、料理や清掃についての勉強をするようにしている。
家具ひとつとっても一般家庭と違って素材が高級なので、使っていい洗剤や傷つきやすい物なのかを調べるのが大変だからだ。
あと、洋服や靴が多いので、その管理やクリーニングについても知識を増やしているところだ。
改めて本格的に始めて見ると、知らないことが多くて日々成長、という感じだ。
ノースエリアは富豪の街だが、低層住宅専用の地域なのでマンションがない。
ようするに、高級マンションによくあるコンシェルジュがないので、一世帯ごとに家事代行を頼むところが多いようだ。
美菜ちゃんと散歩をしているときに知り合った、ベテラン家政婦さんと仲良くなり連絡先を交換することができた。
悩んだときは相談して、いろいろと教えて貰っている。
そんなある日、雅さんが熱をだした。
医者を呼んで診察してもらったが、疲労と夏風邪と診断された。新しい環境でずっと頑張っていたから、仕事と育児の疲れがでたのかもしれない。
雅さんはベッドから起き上がれずに、うんうんと唸る。
「もう、ぜったいこの間の撮影のせいよ……」
「たくさん汗をかいたあとに、クーラーの効いた部屋に居たっておっしゃってましたもんね。ご飯出来たので、食べてお薬飲めますか?」
わたしは卵がゆとスポーツドリンクを枕元に置き、おでこのタオルを冷やしたものと交換してあげる。
モデルの撮影は、季節が真逆で大変なのだそうだ。
夏にコート、冬に水着。
商品の売り出しや雑誌の発行時期を考えると、そうなってしまうのも頷ける。
先日は、毛皮をいくつも着ていたらしい。
「もお最悪……」
喉をぜーぜーとさせながら嘆いた。
雅さんはゆっくり休んで貰いたい。
それは全く問題ないのだが、雅さんが落ち込むのには、風邪をひいたというだけではない理由があった。
「ままぁ……」
ベッドの脇で、美菜ちゃんがグスグスと泣き続けていた。
今日は、雅さんと凛ちゃんで、動物園に行く約束をしていたからだ。
キッチンには、ふたりが持っていく筈だったお弁当と飲み物、それにおやつが広げられている。
ふたりのお弁当を作り、出掛けるのを見送ったら、わたしは一時休暇で今日は自宅に一度帰るはずだった。
(今日は帰らない方がよさそうだな)
楽しみにしていた美菜ちゃんは朝から早起きをし、お弁当作りも手伝ってくれた。
出発の一時間前、雅さんがなかなか起きてこないので、起こしにいったら熱をだしていたというわけだ。
まだまだ覚えることは多いが、なんとかやっていけている気がする。
家を出るのも初めてで、ひとり暮らしもしたことがないわたしがいきなり人様の家で寝食をするなんてと緊張していたが、藤堂家は、ほんとうにみんな親切ですぐに緊張もほぐれた。
雅さんが用意してくれた部屋は、十二畳の広さにシャワーとトイレもついている。
小さな冷蔵庫に、化粧台にテーブル。
ホテルのように一部屋になんでも揃っていて、家政婦が使うとは思えないほど豪華な部屋だ。
クイーンサイズのベッドの寝心地も、お姫様かと思うほど最高だ。
仕事に関しては、食事はいつも喜んで貰えるし、美菜ちゃんとは仲良くできているしで、とにかく楽しくてやりがいがあった。
空き時間には、料理や清掃についての勉強をするようにしている。
家具ひとつとっても一般家庭と違って素材が高級なので、使っていい洗剤や傷つきやすい物なのかを調べるのが大変だからだ。
あと、洋服や靴が多いので、その管理やクリーニングについても知識を増やしているところだ。
改めて本格的に始めて見ると、知らないことが多くて日々成長、という感じだ。
ノースエリアは富豪の街だが、低層住宅専用の地域なのでマンションがない。
ようするに、高級マンションによくあるコンシェルジュがないので、一世帯ごとに家事代行を頼むところが多いようだ。
美菜ちゃんと散歩をしているときに知り合った、ベテラン家政婦さんと仲良くなり連絡先を交換することができた。
悩んだときは相談して、いろいろと教えて貰っている。
そんなある日、雅さんが熱をだした。
医者を呼んで診察してもらったが、疲労と夏風邪と診断された。新しい環境でずっと頑張っていたから、仕事と育児の疲れがでたのかもしれない。
雅さんはベッドから起き上がれずに、うんうんと唸る。
「もう、ぜったいこの間の撮影のせいよ……」
「たくさん汗をかいたあとに、クーラーの効いた部屋に居たっておっしゃってましたもんね。ご飯出来たので、食べてお薬飲めますか?」
わたしは卵がゆとスポーツドリンクを枕元に置き、おでこのタオルを冷やしたものと交換してあげる。
モデルの撮影は、季節が真逆で大変なのだそうだ。
夏にコート、冬に水着。
商品の売り出しや雑誌の発行時期を考えると、そうなってしまうのも頷ける。
先日は、毛皮をいくつも着ていたらしい。
「もお最悪……」
喉をぜーぜーとさせながら嘆いた。
雅さんはゆっくり休んで貰いたい。
それは全く問題ないのだが、雅さんが落ち込むのには、風邪をひいたというだけではない理由があった。
「ままぁ……」
ベッドの脇で、美菜ちゃんがグスグスと泣き続けていた。
今日は、雅さんと凛ちゃんで、動物園に行く約束をしていたからだ。
キッチンには、ふたりが持っていく筈だったお弁当と飲み物、それにおやつが広げられている。
ふたりのお弁当を作り、出掛けるのを見送ったら、わたしは一時休暇で今日は自宅に一度帰るはずだった。
(今日は帰らない方がよさそうだな)
楽しみにしていた美菜ちゃんは朝から早起きをし、お弁当作りも手伝ってくれた。
出発の一時間前、雅さんがなかなか起きてこないので、起こしにいったら熱をだしていたというわけだ。