冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
結局、怜士さんの運転で動物園へ行くことになった。

怜士さんは出掛ける前に電話を何本かしていたが、本当に大丈夫なのだろうか。
多分仕事関係の電話だ。ともかく午前中しか時間が無いので、わたしは急いで準備をした。

怜士さんはスーツだと汗だくでさらには動物くさくなりそうと、カットソーとパンツというラフなスタイルに着替えていた。
それでも美目は良くて、めいいっぱいおしゃれをした美菜ちゃんに、デニムとTシャツにカーディガンを羽織っただけのわたしは、なんだかアンバランスだ。

時間がなかったから、化粧だってほとんどしていない。

まあ、住み込みで一緒に暮らしているわけで、これまでも幾度となくすっぴんだって見られているのだから、今更気どることなんてないのだろうけれど。

でも、こんな素敵な人と出かけられるのなら、多少は身だしなみに気を使いたい。

動物園につくと、美菜ちゃんを真ん中にして三人で手をつないで歩いた。

まるで、家族で来ているみたいでくすぐったい。

怜士さんは午前中だけだと言っていたけれど、結局十四時まで時間を作ってくれていた。

平日の午前中なので比較的空いている。これなら、ゆっくり園内を回れそうだ。
九月に入ったがまだまだ暑いので、美菜ちゃんとわたしは帽子をかぶった。

「美菜はなんの動物が好きなんだっけ?」

「えっとね、うしゃぎと、きりん」

三人で園内マップをのぞき込む。

「あ、うさぎは十一時からふれあい体験ができるみたいです。美菜ちゃん、餌やり体験だって。モルモットとひよこにも触れるよ!」

「しゃわる! なでなでしゅる」

「じゃあさ、ここに十一時くらいに着くようにして、最初はおさるさんのお山から見よっか!」

興奮して話していると、怜士さんがクスクスと笑う。

「ふは、子供をふたり連れてきた気分だ」

「あ……」

我に返って頬が熱くなる。
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