冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
「え⁉」

今、怜士さんはなんと言った?
クルーズ?

「ロイヤルグリシーズだよ。ベリが丘港にいま来ている客船! 今夜出航なんだ。俺はもともとそれに乗るつもりだったんだ。だから、凛も俺と一緒にバカンスに行こう。そうと決まったらすぐに準備だ」

怜士さんは、閃いた途端に動き始める。
この行動力、雅さんと血は争えないのではないか。

「ええ⁉ お、お仕事はっ……?」

「だから言っただろ。休暇だよ。今日から七泊八日のクルーズだ。日程が短いから、韓国と台湾だけしか行けないが、プールも映画館もあるし楽しめるぞ。食事も食べ放題だ」

「韓国に、た、台湾……ですか?」

今から? そんな急に海外にいけちゃうものなの?
藤堂家はお金持ちすぎてよくわからない。

「クルーズは世界一周するから、俺たちは途中下船って感じで、帰りは飛行機で帰ってくる」

驚きすぎて、頭が働かない。

ぽかんとしていると、怜士さんはほら早くしてと、わたしの背中を押す。

「荷物は適当でいいよ。足りないものは全部途中で買ってあげるから、パスポートだけ持ってきて」

「あ、あの、わたしそんなお金……むぐっ」

手の平で、口を勢いよく塞がれる。
後ろから抱きしめられるような体制となり、手足をばたばたさせた。

「うるさいぞ凛。これは福利厚生であり、従業員の任務であり、雇用主からの指示だ」

怜士さんの目が光る。
冷や汗がたらりと出た。

「もう行くって決まったの。無駄なあがきはやめて早く準備をしておいで」

後頭部にキスをされて、ふにゃふにゃと腰がくだけた。
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