冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
はしゃいだ怜士さんが、急かして腕を引っ張った。
そういえば、お昼を食べ損ねたからお腹がペコペコだ。

「何が食べたい?」

「たくさんお店もあるし、良い匂いもそこら中からするし悩んじゃいますね……」

「じゃあ、ビュッフェにしようか。世界中の食べ物とデザートがあるよ」

ビュッフェのフロアに行くと、ウェルカムスイーツが出迎えた。この船の名前、ロイヤルグリシーズをイメージしているらしい。
グリシーズとは、藤の花のことだ。藤の花の色の、青紫の飴細工とケーキだった。

ピザに海鮮、サラダにフルーツ。日本食もある。
あれもこれもと思っていたら、あっと言う間にお皿が山盛りになってしまった。

「取り過ぎました……」

「食べ放題の船旅は、結構太るから気をつけた方がいいぞ」

怜士さんが頬杖をつきながらニヤニヤとする。

「あと、あそこのジェラートも気になります。どうしよう食べたい」

「あしたはサーフィン体験もして体を動かそうな。あと、バスケットコートも船内のランニングコースもある」

「なるべくたくさん食べたいから、運動もがんばりますね」

ピザに齧りつきながら言うと、怜士さんは大きな口を開けて笑った。

「凛といると飽きないな。可愛くて、楽しい」

「……わたしも楽しいです」

言いながら、照れ隠しにトロピカルジュースを飲む。

「連れて来てよかった」

わたしこそ、連れて来て貰ってよかった。
まるでシンデレラが舞踏会に行ったように、ここにいるのが夢みたいだ。
ずっと醒めない夢で合ってほしい。

出航となると、船内でパーティーが始まった。大きな船がゆるゆると動き出すと、お見送りの人達が陸から手を振ってくれた。

DJとダンサーが盛り上げて、船内のそこかしこでスタッフ達も踊りだす。乗客も一緒になって盛り上がった。
わたしらダンスなんて始めてだったけど、見よう見まねで踊った。

楽しくて楽しくて、この幸せな時間が永遠に続けば良いと思った。

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