冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~

凛とロイヤルグリシーズに来たのは思いつきだった。

凛が捨てられた仔犬のような目をするものだから。あんなに寂しそうにされたら放っておくわけにいかないだろう。

直前だったが予約を捩じ込んだ。幸い部屋は余裕があったし、なんとかなって良かった。ちょっとした権力は使わせてもらったが、自社といえどお金は払っているし問題無い。

初日は船内探索だけで終わり、二日目は買い物をして、ミュージカルとアクティビティを楽しんだ。

「怜士さん、準備できました」

三日目の今日は、朝に韓国の島に入港した。
朝一で下船して、凛はお菓子と化粧品を買っていた。
普段はあまり化粧っ気ないが、やはり女性だなあと思う。買ってやるといっているのに、予算を考えながらじっくり吟味していた。

二時間ほどで戻り、お菓子を摘まんでいたので、お昼前からプールを楽しむことにした。

水着に着替えた凛が、恥ずかしそうに洗面から顔をだす。

昨日食事の後に買った、水着とワンピースを着ている。オレンジの明るい色を選んでいたが、凛のひまわりのような笑顔にぴったりだ。

ワンピースは、ボディラインが出る大人びたデザインだ。

普段はジーパンと緩めのティーシャツ姿しか知らなかったため、いつもと違う雰囲気が彼女の魅力を引き立てた。

計算外だったのは昨夜。
ベッドが四台もあったのは失敗だったかもしれない。凛は俺と一番遠くのベッドを選んだ。

なんでそれを寂しく思ったんだろう。

いつの間にか一緒に寝るものだと思い込んでいたらしく、ひどくがっかりした。

(まあ、恋人なわけでもないもんな)

じっとみていると、凛が俺を見上げて反応を待っていた。

(仔犬……)

喉の奥で笑うと、凛は慌てる。

「や、やっぱりなんか変ですか……!」

「違うよ。可愛すぎて笑ったんだ」

「もう、怜士さん昨日からそればかり……」

どう反応していいかわからない、という反応も新鮮だ。凛ならなんでも愛おしく思えるのかもしれない。

「よく似合ってる」

そう言うと凛ははにかんだ。
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