冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
「あー、なんか遊んだ! って感じがします。こんなにはしゃいだの久しぶり。笑いすぎて喉が枯れてきました」

凛は、レモン味のカクテルをチビチビと味わいながら飲む。お酒も珍しがって、積極的に飲みたがった。
お酒に強いわけではなさそうだが、味を楽しんでいた。

「俺も、笑いすぎて腹筋が痛いのは久しぶりかも。まだ体力を残して置いてくれよ。この船のほんの一部しか遊べてないんだから」

プールは海に面してガラス張りとなっており、綺麗な地平線が眺められる。

「はい……素敵な景色……」

凛は窓際に座ると、うっとりと外を眺めた。

凛は、カクテルを半分も飲むと顔がうっすらとピンクになってきた。
飲むのが遅いので、俺はひとりで二杯目を注文しに行った。それはほんの少しの時間だったのに、その隙に外国籍の男が凛に声をかけていた。

「あっ、あいつ……」

十中八九ナンパだろう。
ボディタッチまでしている。

(何、勝手に触ってるんだ!)

苛つきながら凛の元へ向かう。
男は、ひとりなら一緒に飲まないかと誘っていたが、凛は英語が分からないらしく、首を傾げていた。

男は、凛のことを可愛い可愛いと絶賛していて、誉めているのに腹が立つ。

慌てて追い払ったが、怖がっているかと思った凛は意外にも平然としていた。

「怜士さん、英語も喋れるなんてさすがですね……何て言ってたんですか?」

「一緒に飲もうって誘ってたから、俺の連れですって断っただけだよ」

「それって、ナンパってことですよね。すごい。初めてされちゃいました」

嬉しげにしている気がしてムッとする。
脳天気すぎやしないか。

「俺がいるのに、ほかの男で喜ぶとは何事だろうね。俺ひとりじゃ不満? 退屈なのかな」

「ち、違いますよっそうじゃなくて……」

腰を抱き寄せると、凛は「ふわあ」とへんな声をあげた。

(俺以外の男に触らせやがって)

凛の体は熱を持っていた。
くっついた胸から尋常じゃ無いほど早い胸の鼓動が聞こえて、すぐに溜飲はさがった。

しかし、ちょっと虐めてやろうと、足の間にいれて逃がさないように拘束する。

「そうじゃなくて?」

「怜士さんが素敵だから……」

「俺?」

何で俺の話になるんだ?

「怜士さん、色んな女の人から見られているの気づいていませんか? それって、怜士さんがすごく魅力的ってことなんですよ。
一緒にいるんですし、少しはわたしも釣り合うようになりたいじゃないですか。

わたし人生で初めて声をかけられたんですよ。ナンパって、魅力が無ければしないかなって思って……」

一生懸命説明してくれたが、喜ぶ方向が間違っている気がしなくもない。

「うーん?」

女性として魅力的になりたい気持ちもわかるが、それで、凛がナンパされまくるのは勘弁だ。
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