冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
昼食兼夕食は、船内に二十件もあるレストランのひとつを選び、そこのコース料理にした。

本場のフランス料理で、オードブルから始まり、スープにオマール海老と軟らかい牛肉。ソルベにケーキまで食べて頬が蕩けそうだった。

しかもコース料理なのにおかわりし放題というのは、客船ならではらしい。スイカのソルベがとてもさっぱりして美味しかったのでおかわりしたかったが、他にも食べたいものがたくさんあったので我慢した。

夜も遊ぼうと思ったけれど、プールと体を重ねたことで体はヘトヘトだった。

食べ物や飲み物は部屋に持ち帰れるので、つまみになりそうなものとお酒を持って、部屋でふたりでゆっくりすることにした。

港を出港して、明日は一日クルージングだそうだ。

広いバルコニーにもソファがあるので、そこに並んで座ると乾杯をした。

潮風を受けながら夜空を眺めると、星がいくつも見えた。夜の海は真っ暗でちょっと怖いので、空の方が綺麗かも。

「凛、もっとこっちへおいで、寒くない?」

呼ばれて、怜士さんにくっつく。怜士さんは今までも優しかったけれど、恋人になった途端にわたしをベタベタに甘やかすようになった。

隙あらばキスをしてくるし、ぬいぐるみのように抱き寄せる。

「風が涼しくなりましたね」

甘えて肩に凭れると、怜士さんは頭を引き寄せてこめかみに唇を当てた。

怜士さんがこんなにキス魔とは。
それとも、男の人ってみんなこうなのかな? 高校生の頃に好きだった同級生とは告白も出来ずにおわって、卒業してからはそれどころじゃなかったから、すべてが初体験だ。

初デートがこんなにも豪華なのは、世界中でわたしだけなんじゃないかって思う。

「久々の休暇が、こんなにも楽しくなるなんて思ってなかったな」

怜士さんはしみじみと言う。

「ずっと忙しかったっておっしゃってましたもんね」

「そうだな……父が急逝して会社を継いでからここ三年くらい、まともな休日はなかったかも。同時に、会社最大規模のプロジェクトも継いだから……」

「大変だったんですね……わたしは飛び入りさせて貰った身ですけど、楽しんで貰えてるなら嬉しいです」

「そういえば、凛は俺が何の仕事やってるかって聞いてる?」

ふいに、思い出したように怜士さんが言った。
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