冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
そういえば、気になったことはあったけれど聞けずにいたなと思い出す。
雇用主の仕事って、家政婦をやっているなら、入れておくべき情報かな。

把握して欲しい人と深くかかわらないで欲しい人と、それぞれな気がする。

怜士さんは、仕事の話は家では一切することはなかったから、プライベートとはキッチリ切り離したいのだと思っていた。こちらから聞くのも憚れて、今まで知らずにいたけれども……。

「いえ、すみません……存じ上げないです……」

「いや、いいんだ。秘書でもないんだし、すべてを知っておいて欲しいわけじゃないから。凛はそのままで、家で俺を癒してくれればいいよ。でも、そうだな……」

怜士さんは少し考える素振りをした。

「最初は、雅さんとご一緒で、モデルとか俳優業の方だと思っていたんですけど」

「俳優?! 俺が?!」

怜士さんは心底おかしそうにする。

「だって、背が高くてすらっとしてるし、オーラもあるし……何より、その、眉目秀麗といいますか」

本人を前に、どう表現すれば良いかわからなくて辿々しく伝えると、とうとうぶはっとカクテルを噴き出した。

「ゲホッ、ゲホッ……ごめん、あは、あはは。凛ってば、俺を美化しすぎだよ。恥ずかしくなってきた」

「そうですか? そんなことないと思うんですけど。怜士さんって、なんか光ってません?」

「ははは!」

怜士さんはお腹を抱えだした。涙を滲ませるほど笑い転げる。

そんなに変なことを言っているだろうか。だって、本当に輝いて見えるのだ。

「ふ、ふふっ、ありがとう、凛の気持ちはよくわかったよ」

絶対わかってくれていない。
唇を尖らせると、怜士さんは、宥めるようにそこを指で突いた。

「……結局、お仕事ってなにされているんですか? ツインタワーに会社があることはお聞きしてます」
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