冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
家政婦としては聞けないけれど、恋人としては彼氏がなんの仕事をしているかくらいは知っておきたい。

「……そうだな、せっかくだから、この旅が終わったら教えるよ。楽しみはとっておいた方がいいだろ?」

怜士さんはグラスを置くと、わたしを膝の上に乗せ軽いキスを繰り返した。鼻先が頬を擽る。

「凛は俺の癒しだな……」

「ん……」

波の音と、リップ音だけが響く。
徐々にそれは深くなっていく。

「凛ごめん、もう一回していい?」

「えっ」

トロンとしていた目を見開く。

「ひ、昼間たくさしたから、今夜はゆっくりしようって……」

だから今夜は、遊びに行かずに部屋にいるのに?

「そうだけど、だって我慢できそうにない」

「え、え……きゃあ!」

怜士さんはそう言うと、返事を待たずにわたしを抱き抱えて立ち上がった。
突然のお姫様だっこにびっくりして、落ちる! と慌てて首に抱きつく。

部屋に入るとベッドに落とされた。
背中でスプリングが跳ねる。

「好きだよ。どうにかなりそうなほど好きだ」

極上の笑みで翻弄してくる。

――――好きすぎるのは、わたしの方。

ヘトヘトではあったけれど求められるのは嫌では無くて、思い切って自分からもキスをする。

「わたしだって、怜士さんに負けないくらい好きなんですからね」

挑戦的に言う。

「勝負する? 負けないよ」

シャツを脱ぎ捨てながら言う姿に、心臓が跳ねた。
何の勝負? そしてどうやって?

(ああ、これ、いつか慣れる日がくるのかな……)

恥ずかしさと興奮で心臓をバクバクとさせながら、彼を受け止めた。
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