冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
少々、無理をさせすぎたかもしれないが、そろそろ寂しくなったので起きて欲しい。

「りーん。起きて。遊びに行こう」

「うう~ん」

悩ましげに呻く。

「寝てたらまた襲っちゃうよ」

「うう……もう駄目です。なんか全身筋肉痛で……」

「ククク」

断り方に色気がなさすぎて肩を揺らす。

「筋肉痛にはマッサージがいいらしいから、今日はスパにでも行く?」

「大丈夫……遊びたいです……」

むにゃむにゃと言いながら起き上がった。

熱いシャワーで目を覚ましてもらってから、まずは食事をしに出掛ける。
食事を終え、散歩をしながら今日はショーを観にいこうかと話していたときにトラブルは起こった。

「早く! 早く降ろせ!」

七十から八十歳くらいの男性が、大声を上げていた。顔は真っ青。ヨタヨタとしながら杖を振り回している。日本語を話しているので、日本人のようだ。

後ろから、白衣を来た船医が追いかけているが、興奮したお爺さんには声が届いていない。

船医は英語をネイティブとしていて、日本語はカタコトだった。もう一人、日本人の船医が居たはずだが、他の診察で対応出来なかったのだろうか。

「早く降ろせ! わしを誰だと思っている!」

さらに、クルーがふたり駆けつけて宥めるが、お爺さんは落ちつかない。

周囲の乗客は、何を騒いでいるのかわからなくて困惑していた。
乗客は多国籍だ。
言葉が分からない人も当たり前にいるので、不安からか、騒ぎはすぐに大きくなった。
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