冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
(――――諦めたくない)
この場は譲ったが、中森に凛を渡すつもりなどなかった。
歩いていると、かっとなっていた頭がどんどん冷えて思考がクリアになる。
ASIMORIとの契約について、すべてを調べ切れてもいないのに、凛との関係に焦って感情で動くから失敗した。
このままだと凛を失ってしまうと思った。
待たせていた車に乗り込むと、すぐに朝倉の仕事用の携帯に電話を掛けた。
『今日は休暇のはずですが?』
文句を言いつつも、朝倉は数コールで出てくれる。
「悪い。ASHIMORIの件を早急に解明したい。調査に時間がかかりすぎているし、人手を増やして対応してくれないか」
当事者は退社しているし、ASHIMORIの元従業員とも連絡がとり辛いと聞いている。連絡が取れても、ウィステリアマリンを恨んでいる人もいて、やりにくいらしい。
社内書類も破棄されて見つからなかったり改ざんが見受けられ、調査は難航しているとは聞いていた。
『……ASHIMORIとの契約解除ね……。たとえ藤堂個人が悪くないと言う、言い訳できる資料が揃ったとしても、藤堂が今のウィステリアのトップなのは揺るがない事実なわけで。
だから、凛ちゃんと無事に復縁できるかどうかはわからないと思うけどね』
休日に電話をしたからか、今日の朝倉は同期モードだ。それなのに、友達とは思えない正論に顔を顰める。
休暇でロイヤルグリシーズに乗ることは伝えていたが、急遽凛を同行させたことは話していない。
結局、スタッフたちには俺の乗船はバレたので、どこからか話が流れ聞いたのだろうが、いったいこいつはどこまで把握をしているんだ?
なんでも筒抜けなのは、秘書として優秀だと思うべきなのか。
「こういう時はふつう慰めないか?」
復縁というが、俺は別れたつもりはない。
『個人的に応援はしてるけど、倒産は根が深いと思うよ~。そう簡単にいくかなあ。だって、藤堂はかたきも同然っていうか……』
味方のはずの朝倉にまでかたきと言われ、かっとなる。
なんだその軽い態度は。
こっちは真剣に悩んでいるのに。
「うるさいな! それでも好きなんだから仕方ないだろ、俺は諦めないぞ!」
電話口に叫ぶと、運転手がぎょっとしていた。
しまった。
子供みたいな反論に恥ずかしくなる。
運転手は仕事に徹してくれていて、聞こえないふりをしていてくれるが、それもまた格好悪くて仕方がなかった。
まだ、頭に血が上っているみたいだ。
「ああもう……」
自分がこんなに情けない男ったとは。
『クククククク……』
「おい、朝倉……」
気がつけば、電話の向こうで朝倉が大笑いしていた。
この場は譲ったが、中森に凛を渡すつもりなどなかった。
歩いていると、かっとなっていた頭がどんどん冷えて思考がクリアになる。
ASIMORIとの契約について、すべてを調べ切れてもいないのに、凛との関係に焦って感情で動くから失敗した。
このままだと凛を失ってしまうと思った。
待たせていた車に乗り込むと、すぐに朝倉の仕事用の携帯に電話を掛けた。
『今日は休暇のはずですが?』
文句を言いつつも、朝倉は数コールで出てくれる。
「悪い。ASHIMORIの件を早急に解明したい。調査に時間がかかりすぎているし、人手を増やして対応してくれないか」
当事者は退社しているし、ASHIMORIの元従業員とも連絡がとり辛いと聞いている。連絡が取れても、ウィステリアマリンを恨んでいる人もいて、やりにくいらしい。
社内書類も破棄されて見つからなかったり改ざんが見受けられ、調査は難航しているとは聞いていた。
『……ASHIMORIとの契約解除ね……。たとえ藤堂個人が悪くないと言う、言い訳できる資料が揃ったとしても、藤堂が今のウィステリアのトップなのは揺るがない事実なわけで。
だから、凛ちゃんと無事に復縁できるかどうかはわからないと思うけどね』
休日に電話をしたからか、今日の朝倉は同期モードだ。それなのに、友達とは思えない正論に顔を顰める。
休暇でロイヤルグリシーズに乗ることは伝えていたが、急遽凛を同行させたことは話していない。
結局、スタッフたちには俺の乗船はバレたので、どこからか話が流れ聞いたのだろうが、いったいこいつはどこまで把握をしているんだ?
なんでも筒抜けなのは、秘書として優秀だと思うべきなのか。
「こういう時はふつう慰めないか?」
復縁というが、俺は別れたつもりはない。
『個人的に応援はしてるけど、倒産は根が深いと思うよ~。そう簡単にいくかなあ。だって、藤堂はかたきも同然っていうか……』
味方のはずの朝倉にまでかたきと言われ、かっとなる。
なんだその軽い態度は。
こっちは真剣に悩んでいるのに。
「うるさいな! それでも好きなんだから仕方ないだろ、俺は諦めないぞ!」
電話口に叫ぶと、運転手がぎょっとしていた。
しまった。
子供みたいな反論に恥ずかしくなる。
運転手は仕事に徹してくれていて、聞こえないふりをしていてくれるが、それもまた格好悪くて仕方がなかった。
まだ、頭に血が上っているみたいだ。
「ああもう……」
自分がこんなに情けない男ったとは。
『クククククク……』
「おい、朝倉……」
気がつけば、電話の向こうで朝倉が大笑いしていた。