冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~

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「そんなことがあったのね……」

怜士さんが帰ってから、勇が部活から戻り、お父さんとおかあさんが病院から帰ってくると、家族で話し合いが行われた。

仕事を始めることになった成り行きから、怜士さんとクルーズ旅行に行ったこと、それから今日の出来事までを話した。

健と勇も神妙に聞いてくれる。

カズ君が一緒に話してくれると言ってくれたが、自分の言葉で話したいとそれは断った。
心配してくれるが、やっぱり家族のことだし、自分で考えて決めなくちゃって思う。

「お父さんの夢が途中で断たれてしまって、わたしも苦しい時があったよ。でも、それと怜士さんが、どうしてもわたしの中で結びつかないの」

怜士さんは、プロジェクトに参加する前の話で知らなかったことだと釈明していた。
今、詳しく調べているとも。

これまで過ごしてきて、彼は冷酷非道な人なんかじゃなくて、仕事に一生懸命な人だって感じていた。

だから、今は彼の言葉を信じたい。

「凛は、その、藤堂さんが好きなのね」

お母さんが優しく言った。

怜士さんから、自分をかたきだと思うのかと聞かれて、わたしはあの場ですぐに答えられなかった。
それは、カズ君や健に嫌な思いをさせたくないとか、嫌われたくないって気持ちからだった。

答えないことで、怜士さんを傷つけた。

彼は去ってしまった。
きっとがっかりしたことだろう。
もう、嫌われたかもしれない。

せっかく話し合いにきてくれたのに、どうしていいかわからないだなんて、逃げただけだったから。
ただ、自分の気持ちを言えば良かったのに。

彼はもう戻ってきてはくれないだろうけど、自分の気持ちははっきりさせておくべきだ。

「お母さん……ごめんなさい……わたし、怜士さんが好きなの。ごめんなさい……」

膝の上で作ったこぶしが震える。
痛くなるほど手を握りしめて気持ちを吐き出すと、お母さんは目を細めた。
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