冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
「それがねー……」

雅さんが話そうとしたら、リビングから怜士さんが出てきた。

姿を見ただけで、ドクンと心臓が跳ねる。
緊張したけれど、格好いいなとか好きだなぁって気持ちが大きかった。


「その辺にして、解放してやって。今日は俺に会いに来たんだから。ふたりは別の部屋に行っててくれる? 凛、上がっておいで」

そういうと、怜士さんはすぐにリビングに戻ってしまった。

「なあに。あの態度」

雅さんが不思議そうにしていた。

雅さんと美菜ちゃんは自室に行くと、わたしはリビングへと向かった。
心臓が口から飛び出しそうなほど緊張している。

改めて、ふられるのだと実感した。覚悟をしてきたにもかかわらず、泣きそうになる。
怜士さんは紅茶を入れてくれていたようで、茶葉の香りが部屋に漂っていた。

普段ならなんとも思わない香りが、やけに鼻につく。
胃がむかむかとしたが、なんとかやり過ごした。
そういえば、この家で怜士さんにお茶をだしてもらうのは初めかもしれない。

リビングのローテーブルに置かれ、いつも四人で寛いでいたソファへ座る。

怜士さんは正面に座った。その距離が遠くて寂しさを感じた。恋人だったならば、隣に座ってくれていたと思うから。

レモンとミルクの両方を用意してくれていたので、レモンの輪切りをいれた。
酸味のおかげか、紅茶がさっぱりして美味しく飲むことができた。

さっきの胃のむかつきはなんだったのだろう。熱いので少しづつ味わった。

「芦沢さん……お父さんから話は聞いた?」

「いえ、怜士さんから聞くべきだって言われて、お父さんからは特にはなにも」

「そうか、お二人にはちゃんと謝罪したよ。納得いく説明と提案ができたと思うけど……受け入れてもらえるかは結果待ちだ」

怜士さんは疲れたのか、ふうとため息をついて眉間をマッサージした。
責任者として大変だったんだろう。

「ご尽力いただきまして、ありがとうございました」

頭をさげるとやめてよと言われる。

「今はウィステリアマリンの社長としてじゃなく、凛と話したいから」

「……はい」
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