冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
「もう一度だけ、聞きたい。凛は、俺を恨んでいるかな」

ゴクリと唾を飲み込み、苦しそうに言った。
血を吐くような質問に感じた。

怜士さんが辛そうにしているのは、前に聞かれたときにわたしが答えなかったからだ。

傷つけた。

――――苦しめてごめんなさい。

昨晩から、あれを言おう、こう言おうと頭のなかで何度も練習し繰り返した言葉は、のどの奥でつっかえてしまってスムーズに出てこない。

「わたしは、怜士さんが好きです……」

絞り出すように、それだけを言う。
沢山伝えたいことがあった。今までの出来事や感じてきたこと。
初めて正体を知った時の気持ち。

取ってしまった態度を謝りたかったり、たくさん与えてくれた幸せにたいして、ありがとうと感謝も伝えたかった。
でもそれが全部ぐちゃぐちゃになって、嗚咽しかでてこない。

「もうずっと会いたかったです。寂しかった。また抱きしめて欲しくて、会えない間、怜士さんを夢にまで見ました。
好きです。あなたが好き。恨むだなんて、そんなことあるわけない……!」

「凛!」

怜士さんの胸に包まれる。
ああ、できることならもう一度だけと願っていた、あたたかい彼の腕の中だ。

「凛----俺もだ。俺も愛してる。泣かせるとわかっているのに、どうしても諦めきれなかった。

家族が反対するなら、何年かかっても説得しよう。中森と仲良くなれというなら意地でも親友になってやる。
俺は凛が好きで、凛との未来しか考えられない。

だから、俺と、この先もずっと……ずっと一緒にいよう。やり直そう」

悲痛な叫びが胸を打った。
わたしは怜士さんに酷いことをしたのに、こんなにも思ってくれていた。

「……カズ君と、親友になってくれるんですか……?」

最初に出たのはそんな言葉だった。
お互い、あんなに毛嫌いしていたのに?
わたしのために?

カズ君と一生懸命仲良くしようとする怜士さんなんて、想像できない。
それはとても困難な気がして、でも、気持ちは嬉しくて、泣きながら笑った。
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