冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
「凛のためなら。一緒にいれるなら、なんでもするよ」

「怜士さん……うれしい」

目が合うと、互いに引き寄せられるように唇を合わせた。
ふわりふわりと、傷を癒すような優しいキスを繰り返す。

「家族のことですけど……わたし、怜士さんが家まで来てくれた日に、家族で話し合ったんです。わたしは、今と同じ気持ちをみんなに伝えました」

それで? と不安げな視線に促されて、わたしは話す。

「お父さんもお母さんも弟たちも、誰も反対しませんでした。怜士さんを恨んではいないから、わたしの好きにしていいって、応援してくれました」

何でもっと早く相談しなかったのかと後悔するほど、家族はわたしを応援してくれ、
自分達のことはいいから、幸せになりなさいと言ってくれた。

「本当? お父さんも?」

「ええ、娘の好きになった人なんだから信じると言ってくれて」

「ああ、なんだ。そっか……」

「お父さんが何か言ったんですか?」

そう伝えると、怜士さんは盛大にため息をついた。

「娘が簡単に手に入ると思うな、的なことを言われて……あと、俺の他に、結婚の約束をしている男がいるってほんと?」

「え? やだ、お父さんってば」

怜士さんにじとっと睨まれて、わたしは慌てた。

「それ、たぶん幼稚園くらいの話ですよ。わたしがお嫁さんになるって言ったらしいんです。きっと、おままごとの延長ですよ」

お父さんは、ちゃっかり、やり返すことも忘れていなかったようだ。

「誰に?」

その、冷えきった声に背筋が凍る。

「か……カズ、君……らしいですけど……あの、わたしは一切記憶がありませんからね? 彼はいとこのお兄ちゃんで、恋愛感情を持ったことは一度もないですから」

怒り出す前に弁明しておく。

「よりによって彼か……はぁ……記憶がなくても妬けるな」

怜士さんは肩を落とす。

「ひとまず、凛の気持ちが聞けてよかった……もう振られるのだと思ってずっと緊張していたんだ……」

「わたしもです。怜士さんに、嫌われたと思ってました。寂しくてしかたなかったです」

見つめ合うと、怜士さんはまたちゅっとキスをした。
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