冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
目が覚めると、玲士さんと目にいっぱい涙を溜めた美菜ちゃんの顔があった。

「あ、あれ? 」

ここはどこだろう。
ぼんやりと天井を見る。
白を基調とした大きな部屋。こんな部屋、玲士さんの家にあったかな。

「凛……大丈夫か?」

わたしの手を握る怜士さんは、眉間にしわを寄せている。

「わたし……」

何してたんだっけ?
なんで寝てるんだろう……?

「凛ちゃん、美菜が飛びついたら気を失っちゃって……」

雅さんがスンと鼻を啜った。
泣いたのか、目が赤い。

「りんちゃ、ごめねーごめねー」

美菜ちゃんが、布団に縋り付いて泣き出した。
そうだった。美菜ちゃんを受け止めようとして立ち上がったら、突然くらっとしたんだ。

それで、気を失った?
起き上がって美菜ちゃんの頭を撫でようとしたら、腕に点滴がついていた。
天井とみんなの顔しか見えていなかったが、急に視界がクリアになる。

「ここ、病院……?」

「顔が真っ白だったし、頭を打っていたら大変だと思って、救急車を呼んだんだ」

玲士さんが言った。
ということは、救急車で運ばれたということだ。
ちゃんと見回すと、病室とも思えないホテルのような仕様だとわかる。やけに高級だ。
ここはもしかして……

「ここ、ベリが丘病院よ。安心してね」

サウスエリアにあり、有名人やお金持ちばかりが利用するという、高級志向の有名な病院だ。名医がたくさんいると聞いたことがあるから、確かにあんしんだ。
しかし、安心より先に病室代が気になってしまった。
広いしひとり部屋だしで、いったい一泊いくらするのだろう。

「そうでしたか……すみません。大変なご迷惑を……」

こんなに大事になったのは、体調が悪いとわかっていたのに、無理をしたからだ。
自己管理も出来ないで恥ずかしい。

「美菜ちゃん、ごめんね。わたしね、実は朝から調子が良くなかったの。だから美菜ちゃんのせいじゃないよ」

「うー?」

涙をたくさん溜めた目を向けられて、胸が痛かった。
意味が分からなかったみたいで言い直す。

「お風邪ひいていたの。美菜ちゃんのせいじゃないよ」

「ううっ、いたいいたいのとんでけー」

小さな手が、点滴のあたりを恐々と撫でてくれる。
針が刺さっている状態というのは、子供にとって驚くような光景なのかもしれない。

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