冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
「大丈夫大丈夫。元気だよー」

「いつから、具合が悪かったんだ?」

玲士さんが神妙に聞いた。
ずっと難しい顔をしているので、怒っているのだと思った。

「すみません。最近、食欲がなかったので体力が落ちていただけだと思うんです」

「最近、ずっと?」

「そんなに、大事じゃないんです。今日は、昨夜から緊張していたので、たまたま寝不足が重なっちゃっただけで……」

ピリついた雰囲気に、焦って言い訳をする。

「吐き気とかもあったんじゃないのか?」

「え?」

なんで玲士さんがそれを知っているのだと不思議に思ったが、そうだ、病院に居るのだからあたりまえだ。診察をされたんだ。

玲士さんは、その診察結果を知っている。
胃腸が調子悪いのはストレスだと思っていたけれど、胃潰瘍とかだったらどうしよう。
玲士さんの顔色を伺った。

「今日は……途中ちょっと吐いちゃいましたけど、でも、それまではずっと、ムカムカしてる程度でそれほどでは……」

玲士さんは聞いた途端顔を覆い、大きな溜息をついた。

「自分の状況をわかってないようだな」

わたしはビクリと肩を揺らした。
そんなに悪いことしちゃったかな。それとも、大病が発見されたとか?
まさかね。そんなはずは……

「美菜、ちょっとお買い物いこっか」

雅さんが唐突に美菜ちゃんを誘った。

「えー、みーちゃ、りんちゃとここにいるう」

「凛ちゃんが元気になるように、お菓子買いに行こう。たくさん食べて貰わなくっちゃ」

「おかし?」

一度はぶぅと頬を膨らませた美菜ちゃんは、おかしと言う単語にぱあっと顔を輝かせた。

「よおし、お買い物にレッツゴー! じゃあ凛ちゃん、ゆっくり話すのよ」

雅さんはパチンとウインクをすると、美菜ちゃんを連れて病室を出て行ってしまう。

「おかしたっくしゃんかおーね!」

廊下から聞こえる、美菜ちゃんの楽しそうな声がだんだんと遠くなる。
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