冷徹社長の溺愛~その人は好きになってはいけない相手でした~
準備は慌ただしく進み、すぐに四月となり、結婚式の日を迎えた。

船は前日から停泊していて、急ピッチで式の準備が進められていた。

入港したこの船を見上げた時、とても感慨深く感じた。

ずっと苦い気持ちでしか見られなかった港を、これほど晴れやかで幸せな気持ちでみられる日がくるなんて。
豪華な船内が、花やバルーンで彩られより華やかになっている。

わたしは純白のウェディングドレスを纏うと、式場となったデッキへとあがった。
雲一つない快晴で、空も海も真っ青に輝く。海は太陽の光を反射して眩しいくらいだ。

指輪を交換し誓いあい、無事に挙式と披露宴を終える。
二次会のような歓談になると、怜士さんはやっと緊張を解いたようだった。

ふたりでデッキへ出て、風に当たる。
ドレスが風に靡いた。

「海鳥なんていつも見ているのに、なんだか今日は俺たちを祝福してくれているように見えるよ」

怜士さんが空を気持ちよさそうに仰ぐ。

「そうだね」

今日わたしは、怜士さんにサプライズを用意していた。
どんな反応をするかな、と思いながらそれを告げる。

「ねえ怜士さん、子供の名前はカイトとワタル、どっちにしよっか?」

「――――え?」

その瞬間の顔をわたしは目に焼き付け、くふふと笑いを零す。
目を真ん丸として、あの頭の切れる怜士さんが、すぐには理解できないと言葉に詰まっていた。

「----お、男の子だったのか?!」

怜士さんは叫んだ。
わたしは頷いた。

「そうか! そうか!」

怜士さんは興奮して、満面の笑みでわたしに抱きついた。
周りにいた人たちが、おめでとうと拍手をしてくれる。

男の子なら造船について教えたいと話していたから、きっと彼の頭の中は、子どもの人生プランが駆け巡っていることだろう。

心の中で、船オタクのお父さんでごめんね、と赤ちゃんに謝った。



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