笑顔の眩しい腹黒王子は、固い扉を蹴り破る
 シュテーデル伯爵家次女のモニカは、城勤めの侍女だった。
 伯爵令嬢といえど真面目なモニカにとって、侍女という仕事は天職で。行儀見習いとして一・二年……と予定していたところ、勤め始めてもう五年も経っていた。
 その熱心な仕事ぶりから、ついには王妃より声がかかり、以来二十一歳となる今日まで王妃付きの侍女として日々を送っている。

 つまり、モニカはただの侍女だ。
 誰が何の目的でこんなことをしたのかは分からないが、こちらとしては大迷惑である。今日やるはずだった仕事は放ったらかしで、王妃だって突然姿を消したモニカのことを心配しているだろう。

 早く戻らなければと思うものの、嗅がされた薬のせいで身体がだるい。それでもなんとか立ち上がり、部屋の扉を開こうとするものの。案の定とでもいうべきであろうか、木の扉は外側から鍵で閉ざされていて、こちらから開くことはない。
 
(まいったわ。明日はローレンス殿下のお妃選びだというのに)

 
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