笑顔の眩しい腹黒王子は、固い扉を蹴り破る
「――ローレンス殿下、申し訳ありません」
「なぜ君が謝るの」
「一晩、私などと一緒にいらっしゃって、変な噂がたってしまったらと思うと……」

 きっと朝まで待てば、ローレンスの捜索が行われるだろう。庭にだって捜索の者は来るだろうし、その時がくればきっとここからは出られるはずだ。

 けれど、その時はモニカと一緒に発見されることになる。お妃選びが行われる大事な日に、侍女と一晩を過ごしたという好ましくない事実が発覚してしまう。

「変な噂、か」
「私などと一晩一緒であったとしても、殿下に限っては何も無いと、皆様お分かりになるでしょう。けれど、やはり外聞はよろしくありません。その時には、私が責任をとってお暇させていただきます」
  
 ローレンスは、身持ちの固い男として評判だった。
 端正な顔立ちに、有能で人当たりもよい皇太子。彼に選ばれたいが為、行儀見習いに上がる令嬢も後を絶たない。過去には令嬢から色仕掛けをされたり、夜這いをかけられたりということもあったと聞いている。

 それらにも全く動じなかった彼が、侍女と一緒に閉じ込められたくらいでは信頼を失うこともないかもしれない。
 けれど……モニカには責任を感じずにはいられないのだ。
 
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