笑顔の眩しい腹黒王子は、固い扉を蹴り破る
「なに言ってるのモニカ。一晩中、男と二人きりだったなんて、君の方がダメージ大きいでしょ」
「そ、それは」
「そうでしょ?」
「まあ、そうですね……」

 厳しい現実に、モニカはがっくりと項垂れる。
 
 こんな場所でローレンスと閉じ込められてしまって、もし噂が立ってしまったら。
 なにかと下世話に噂をされてもおかしくない。というか、面白おかしく噂されるに決まっている。

 そうなれば、モニカにはいよいよ縁談の類も無くなるだろう。考えたくもないけれど、今後の身の振り方を考えなければならないかもしれない――

 モニカが残酷な未来予想に絶望していると、ローレンスはこちらに向かって明るく笑いかけた。
 
「もしそんなに噂がたったなら、俺に責任を取らせてよ」
「え?」
「大丈夫。悪いようにはしないから」
「ほ、本当ですか……?」 
 
 それはまさに救いの言葉だった。モニカの顔も声も、たちまちパッと明るくなる。
 
 こんな閉じ込められた状況であるというのに、ローレンスは最初からずっと余裕ある笑みを浮かべていて。その様子が実は少し不気味でもあったのだが、もしかすると彼には何か考えがあるのかもしれない。

 噂を揉み消す算段でもついているのだろうか。
 それとも、モニカに別の勤め先を紹介してくれるのだろうか。
 ここより良い勤め先など、無いとは思うが仕方がない。噂が広がってしまっては、もうここにはいられないだろうから。 
< 7 / 11 >

この作品をシェア

pagetop