あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした
「えーと、その名前からして男で合ってますか?」
言いにくそうにそう聞いてくる彼。
どうしてわざわざそんな事を聞くんだろう。
見るからに男の格好ではないか。
自分の服装に目をやりながらコクっと頷く。
知らない場所では男のフリをしてた方が何かと便利なのだ。
むしろこの格好で良かった気がする。
スカートとか履いてたら言い訳が出来ないから。
「そうですか…うーん、ではその頭に被っているものをどかしてもらえます?」
「……。」
その言葉を聞いて眉間にシワが寄る。
(どうしてそこまでしなきゃなんないの?そろそろ解放して欲しいんだけど…)
フードを少しあげて彼をよーく見つめる。
(……濃い青色…先程の人と言い、ここにいる人達はどれだけ清い心を持ってるの?あたしの知っている現代の人は、赤黒く染まっている人ばかりだったのに…)
それとも…"この人達"だから青色なのか?
「まーた話聞いてないですね?その頭に被っているものを取ってください…ちゃんと顔も見れないでしょう?」
「……断る」
流石にフードを取る訳にはいかない。
取ってしまっては、ここでフードをしてきた意味が無くなってしまう。
「…どうしてですか?顔を見せられない理由でもあるんですか?」
あたしは顔をしかめる。
(…あるから見せてないんだろうよ?それ以外に理由ある?ないよね?あたしだって理由がなければ取りたいよ…けどこの目があるから…)
彼はそんな空蒼を伺っているのか何も言わない。
空蒼は自然と足元を見つめていた。
昨日眠る時に遠くに行きたいと思ったものの、遠くに行ったってこの目がある限り逃れる事は出来ないんだ。
こうやってフードを被っていれば誰だって疑問を持つ。
相手からしたら何の理由も無く言っているだけなんだろうけど、空蒼からしたらそれは突っ込んで欲しくない領域なのだ。
でもそれは絶対に相手には届かない。どうして気付かなかったんだろうか。
(この目がある限り…あたしは…)