あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした
門をくぐると、ちらほら人影が見えた。
こちらを気にしているようだが特に声はかけてこない。
(…その方が有難い)
「…大人しくしてろよ」
「……。」
先程よりも警戒心が半端ない。
そりゃそうだ。新選組に名を改めてからより規律が厳しくなったと言われている。こうもなる訳だ。
(でも……)
空蒼は土方さんの周りを纏っているオーラを見つめる。
総司でさえも濃い青色だったのに、それよりも濃い紺色に近い色をしているとは意外だ。
「ここから入れ」
そう言われて目に入ったのは縁側だった。
土方さんが先に下駄を脱いで、縁側に上がった。
空蒼もそれに習い、履いていたスニーカーを揃えて地面に置く。
「こっちだ、付いて来い」
ピリピリとした雰囲気が土方さんから漂っているのが分かる。
そんな土方さんに空蒼は足早に付いて行く。
こんな人が…こんなにピリピリしている人が、紺色のオーラを纏っているのはちょっと予想外だった。
オーラ。
それは空蒼にしか見えない、人間特有のオーラ。
物心ついた時から見えるそのオーラは、人によって色が違う。
簡単に言えば、いかがわしいことや悪い事、後ろめたい事をしている人は悪い人と認識され、その人のオーラは暖色系になればなるほど危険になる。空蒼が見てきた中では、赤黒いオーラを持っている人が一番悪に近かった。それよりも上は見たことがない。
逆に心が綺麗な人や、清く安らかな心の持ち主だとオーラは寒色系になる。
なので、総司や土方さんはそれの持ち主という事だ。
また、暖色系でも寒色系でもなく、中間に位置する人間のオーラは無色透明。経験上これが一番多いだろうか。
左から、赤、ピンク、オレンジ、黄色、黄緑、透明、緑、水色、青、紺色、紫。
赤に近いほど悪で、紫に行く程善だ。
空蒼はこれで人の善し悪しを見てきた。
だからと言って、このオーラは最初は全然信じていなかった。
中学生のあの出来事がきっかけで、信じるようになったのでそれまでは特に気にすることなく過ごしてきた。
でもそれがこちらで役に立つとは思わなかった。
どうしてオーラが見えるのか分からないけど、あの時代よりもこっちではこれが役に立ちそうだ。
ただ、普段からずっと見えているのではなく、自分が見たいと意識した時にだけ見えるという、なんともまぁ便利な物でもある。
「…ここだ」
――ドンッ
「ぶっっ……!」
土方さんの声が聞こえた瞬間、空蒼の顔面に衝撃が走った。