あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした
「…まぁでも、こいつ…朔雷空蒼だっけか?ここに置くんだろ?」
こほんっと咳払いをした左之助が俺の方を見ながらそう聞いてきた。
「…。」
無言のまま、俺はそいつの寝顔を見つめる。
「…もしそうなったら他の奴らなら黙ってないかも?…ここは男所帯だし一人や二人そういう関係になる可能性も十分にあるな」
ニヤニヤしながらそう言ってくる左之助に少しイラつく。
確かに前髪を伸ばしていても美形だと分かるこの顔立ちが、他の隊士らと顔を合わせるとなるとどうなるか分からない。
でも俺には関係ない。
そうなったらそうなったらだ…同情はするけどな。
「…そんなの俺は知らねぇ…それにまだ入隊するとも決まってねぇよ」
「決まってないの?」
きょとんとする声に視線を左之助に向ける。
「少しは剣の腕に覚えがあるっつっても、実際に手合わせしてみねぇと分からないからな。入隊の話はその後だ」
もし腕に見込みがあるなら歓迎する。
が、少しでも否と感じたら追い出す、それだけだ。
「ふぅん…近藤さんが天才とか言ってたから、てっきり入隊するのは決まってるのかと思ったぜ」
ニコッと笑いながら無邪気な笑顔を向けてくる。
こういう時の左之助の存在はとてもありがたい。
「…そうであってほしかったか?」
無表情のまま左之助に聞いてみる。
「んー…俺は別にどっちでも?話した事まだ一度もないし、どんな奴かも分からないからな。でもまぁ…入るなら仲良くはしたいかな!」
笑顔でそう言う左之助は、自分がどれだけ良い人なのか分かってない。その言葉で救われる人は何人いるだろう。俺とは大違いだ。
「その言葉…起きたらこいつに言ってやれ」
「…え?」
人と関わりたくない雰囲気満載のこいつが、この言葉を言われたらどんな反応するだろうか。
そんな事を思うと自然と頬が緩んでいた。
「よく分からないけど…土方さん今笑った!」
と、急にそんな事を言ってきた。
「あ?寝言は寝て言え」
俺は左之助を睨みながらそう言った。
「あーあ、またいつもの土方さんに戻っちゃった」
残念だなぁと言いながらも、穏やかな表情をしている。
「うるせぇ…喋る暇があるならお前は山崎を呼んでこい」
「ちぇっ、つまんないのー」
そうぶつぶつ言いながら部屋を出て行った。
「はぁ…」
やっとうるさいのが去った。
俺は目の前にいる人物から視線を逸らし、山崎が来るのを待つ事にした。