あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした
「あんたに…あんたにこの気持ちが分かるわけない!自分が今までどれだけ蔑まされてきたことなんか!分かられてたまるか!…はぁ…はぁはぁ…」
胸ぐらを掴んだまま、土方さんの目を見てそう怒鳴った。
そんな空蒼に対して土方さんは、何も言わずただ黙ってあたしを見つめていた。
嫌いな目を見られているのなんてお構い無しに。
「っ……うっ」
急に怒鳴ったからか目眩がした。
その拍子に身体がふらつき、土方さんの胸ぐらから手を離す。
「っと…大丈夫か?」
そんな空蒼を土方さんが支えてくれる。
「触るな!」
空蒼は土方さんの手を払い除けて、後ろに数歩下がりその場にしゃがんで手をついた。
「はぁはぁはぁ…」
息が上がっているのかとてもしんどい。
身体も言う事を聞かず、今にでも倒れそうな勢いだ。
「…熱が上がってるな」
そんな空蒼を見て土方さんがそう言う。
手をついて下を向きながら、なんとか身体を支える。
「…まだ熱が下がってねぇのに変な事言って悪かった。早く横になれ」
「…れ」
「あ?」
「黙れ」
「……。」
荒くなる息を上手く調整してそう呟いた空蒼は、顔を上にあげて土方さんの方を向いた。
「…何様の、つもりだ…何も知らないくせに…目が綺麗だとか、勝手な…勝手な事を言うな!」
土方さんの目を見つめながら怒鳴り散らす。
(あたしの気持ちなんて…誰にも分からない)
「…分からねぇよ」
「…は?」
頭が痛いのを我慢しながら話を続ける。
「分かるわけねぇだろお前の気持ちなんて」
「……。」
怒鳴ったにも関わらず、特に怒ることも無く無表情のまま。
そうだ、誰にも空蒼の気持ちなんて分かりはしない。ずっとそれでいい、ずっと。
「…分からねぇが、俺はお前の目を綺麗だと思う」
「っ……だからっ…」
その後の言葉が出てこない。空蒼は咄嗟に下を向いた。
(綺麗な目?何回言えば気が済むんだろう。あたしはこの目が嫌いだ、一生好きになんてなれない。それなのにどうして、どうして綺麗だと言う?)
畳を見つめながら、溢れ出しそうな涙を必死に堪え空蒼は言い放った。
「…あんたらがなんて言おうと…自分は…自分はこの目が嫌いなんだ!嫌いで大嫌いで一生好きになんてなれない…それなのにどうして!……っ!?」
言い放った瞬間顔を上げたら、いつの間にか目の前に土方さんが目線を合わせてそこに居た。
「っ……なっ!?」
そして何をするのかと思ったら、土方さんは両手で空蒼の頬を挟んできた。
「なっ…離せ!」
「綺麗だって言ってんだろ!!」
「っ……!?」
頬に触れている土方さんの手を解こうとしていたら、急にそう怒鳴ってきた。