あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした

第六話





「〜〜〜〜〜!」
「〜〜!」
「〜〜〜〜!」


何か聞こえる。
何人かの話し声が近くで聞こえる。

「〜〜ら!お前らは静かにする事を覚えろ!」

誰かの怒鳴り声。

「そう怒鳴る人が一番うるさいよなぁ?」
「あぁ!?」

(うるさい)

空蒼はもぞもぞと身体を動かす。

「あっ今動いたぞ!?」
「本当か!?」

空蒼の動きに反応するようにそんな声が聞こえた。

「……うる、さい」

そう口にしてあたしは目を開けた。

――ぱちっ

「……っ」

目を開けた瞬間、横になっている空蒼を覗き込んでいるのが、一、二、三、四人。

「おっ目が覚めたか!」

そう言うのは、右側に座っている黒髪の短髪の男。

「待ちくたびれたぜ〜」

その隣にいる、腰くらいまである長い髪を後ろに結んでいる男。

「空蒼くん!」

今度は左側に座っている、あの日の夜から空蒼の事を名前で呼ぶ、見慣れた顔。

「……。」

その隣に座る、出会った時も無表情だった男。
そして、空蒼に対して説教じみた事を言ってきた人でもある。

「…目が覚めてよかった」

左に座っている見慣れた顔、近藤さんが安堵した顔でそう言ってきた。
それを聞きながら空蒼は身体を起こす。

「っ…急に身体を起こすと危ないぞ!」

黒髪の短髪があたふたしながら空蒼を制そうとしている。
身体を起こす事くらいで何を慌てているんだか。

「……いえ、大丈夫です」

誰だか分からないが心配してくれているようなので、一応返事をしておく。

「空蒼くん…もう体調は大丈夫なのかい?」

その声に視線を向けると、眉毛をへの字にした近藤さんがいた。

「…はい」

やっぱり熱が出ていたみたいだ。確かに辛かった様な気がしなくもない。

「それにしても変わった目の色をしてるんだな?」

その言葉にビクッと反応する。
長い髪を後ろで結んでいる男が空蒼の顔をじっと見つめてそう言ってきた。

「確かに!でもあれだな?見慣れないってのもあるけど…綺麗だな?」
「っ…」

その言葉に目を見開いた。
短髪の男もそう言いながらじっと見てくる。

空蒼はチラッと視線だけを土方さんの方に向けた。

「……。」

無表情で無言ではあるものの、フードを被っていない空蒼の目を見つめてくれている。

はっきりとは覚えていないけど、いつかの夜土方さんが言っていた。

"この目を誇りに思え"と。

いつかきっとこの目が生きる意味になると。
目を隠すために、伸ばしていたこの前髪も頭に被っている物も、もう必要ないと。
確かにそう言っていた。

それが空蒼にとってどれだけ嬉しかったか。
どれだけ気持ちが楽になったか。
彼は知っているだろうか。






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