あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした
そう思うのに、自分を拒否してほしいと思う反面、誰よりも一番近くで新選組を見てみたいという思いも存在する。
傷付くと分かっていながら、悲しむと分かっていながら、少しだけ触れた彼らの優しさをずっと感じていたいと思ってしまう。
そんな感情は全て、きっと自分のわがままなんだろうか。
でも、この目を綺麗だと言ってくれて、自信をつけさせてくれた彼らに、恩返しをしたいという気持ちはこれからずっと変わることはないだろう。たとえ、離れることになったとしても。
どうするべきなのだろうか…。
(……うん?)
何となく気持ちが沈んでいると、天井が少しおかしいことに気が付いた。
天井の隅付近、木の板の一角になにやら小さい穴が空いている。
(…穴?何で天井なんかに……待って、まさか…)
空蒼はある仮説にたどり着いた。
現代の人からするとあまり馴染みのない存在だと思うが、この時代ならあり得る。
幕末の時代だからこそ活躍する人たちがいる。
もしかしたら、空蒼があの物置小屋に居る時から、見張っていたのかもしれない。
それが小屋から部屋に変わっただけ。
(はは…言う事を聞いて物置小屋に行って、熱まで出たのに…それでも間者だと疑われたままとは…どんなに優しい人達でもあたしは所詮他人に変わりないんだね…)
今更ながら知るその事実に、気持ちがより沈んでいく。
ダメだ、違う。どんなに目を綺麗だと言われようと、もう誰も信じないと決めたではないか。
人はすぐ裏切り、離れていく。だから…悲しむことも、気持ちが沈む必要もない。
ここには、誰一人として自分の味方などいないのだから。
「…ふぅ……」
そう思い込むことによって自分の気持ちに蓋をする。いつからか、これが当たり前に癖になっていた。
でもそう自分に言い聞かせると、心はいつも軽くなった。
空蒼は寝転がったまま、穴の空いた天井を凝視する。
放ってもいいが、気付いてしまったからには見て見ぬふりはできない。
四六時中見張られていると思うと、安心して眠れない。
(…ちょっとからかってみるか)
空蒼はごほんと咳ばらいをした後、口を開いた。
「あれぇ?なんか天井に穴が空いてるなー、何でだろう?」
馬鹿っぽく、子供みたいな話し方で天井の穴について指摘した。
――シーン
だが、何の反応もない。
(じゃあ…これならどう?)
「なーんか、覗き穴みたいに見えるなー」
――シーン
(…ちっ、これでもダメか…流石諸士調役と監察を兼任するだけの事はあるな…)
どうしたら罠に掛かってくれるだろうか。
うーんと考えていたら、一つの事を思いついた。