あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした
空蒼のその言葉に怪訝な顔になる美少年。
(言い方間違えた?)
空蒼は被っているフードを抑えながら彼を見つめる。
「んー…いや、倒したら倒したでそれで良いんですけど…そうじゃなきゃこいつらの仲間だと認識するだけなので…」
「勿論自分がやりました」
彼の言葉にすかさず同意を述べた。
奴らの仲間にされるのはとてもじゃないが我慢できない。
こんなガキみたいな奴らと一緒にしないで欲しい。
「そうですか…なら大丈夫です」
「……そうか、じゃあ」
その言葉を聞いて安堵したあたしはこの場を離れようとする。
(あ…これ刀…どうしよう)
武器を持ってた方が何かと便利ではあるが、一応真剣に変わりはないので元通り、倒れている男の傍に置いておくことにした。
(これでよしと)
地面に刀を置いて立ち上がる。
――ガシッ
(…?)
立ち上がった瞬間、左腕を後ろから掴まれた。
後ろを向くと、先程の美少年が空蒼の腕を掴んでいた。
「……何か」
仲間じゃないと証明したはずなのに何故腕を掴まれているのだろう。
空蒼は睨む様にして彼を見る。
「…不思議な格好をして、変なものまで被っている人を俺達が放っておく訳がないでしょう?」
「……。」
俺達がと言われても知る由もない。
貴方の立場が何なのかこちらには何も分からないのだから。
だからと言って、こうも乱暴にしてもいいという訳では無いはずだ。
それに俺達とはどういう事だろう。
俺ではなく俺達?
彼の他にも仲間が居ると言っているようなものだ。
「……貴方は何者?誰の許可を得て通行の邪魔をする?」
ここが何処なのか知りたかっただけなのに、なんか変なのに巻き込まれそうな予感がしてならない。
こんな危険を冒してるのに、ここが何処なのか決定的な証拠がないのだから彼のこの行動にすらイライラする。
判明した事と言えば、倒れているこの人達は新選組では無いと言う事。ただそれだけなのだ。
「…あれ?知らないのですか?もう半年も経つのでこの辺りに住む方々は知っているとばかり思ってました」
そう言いながら、ふむと考え込む彼。
空蒼は目をぱちぱちしながらその言葉に若干引いていた。
(……自意識過剰?それともナルシスト?)
ここには変な人しかいないのだろうか。
それにしても半年も経つとはどういう事だろう。
元々ここの住人ではない言い方だ。
「では改めて、俺は新選組一番隊組長沖田総司です、以後お見知りおきを」
そう言ってニコリと微笑む彼。