あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした
「なぁー、仲良く話しているところ悪いんだけどさ、そろそろ昼餉食べようぜ~…俺お腹空きすぎて倒れちまうよ~」
「「…っだから仲良くないって何回言えば気が済むんだよ(済むんですか)!!」」
原田さんのその言葉に、空蒼と土方さんはまたしても仲良くハモってしまった。
「「……。」」
そしてお互いギロッと睨みあう。
(近藤さんだけかと思ったら、まさか原田さんにまで言われるとは…)
「まぁまぁトシ、落ち着こうか」
貧乏ゆすりをし始めた土方さんを近藤さんが優しくなだめる。さっきは近藤さんが言っていたくせに何を言ってるんだか。
「ん?俺今初めて言ったのにどうして怒られてるんだ?」
状況が掴めていない原田さんに悪いなと思いながらも特に何も言わない。
自分はやっぱり土方さんとは気が合わない。
こうも馬が合わないのだから嫌われて当然だろう。
「そうだな、左之助が倒れる前に皆で早く昼餉を食おうか」
土方さんをなだめながら優しくそう言う近藤さん。
皆、原田さんの疑問には答えないのかなと思いながら皆の顔色を窺うが、答える気はなさそうだ。
(ご愁傷様です、原田さん…)
すると、見回していたら近藤さんと目が合った。
「空蒼くんも一緒に食べようか、皆で食事をする部屋があるからそこで…」
「こいつはダメだ」
(……。)
すると突然、近藤さんの言葉を遮って土方さんが声を上げた。
それはそうと、昼って言っても自分は朝も何も食べてないのだが。
チラッと向けた視線の先には、近藤さんが持ってきてくれた雑炊が入った鍋が置いてある。
(もう冷めてると思うけど、せっかく持ってきてくれたんだし食べないと…それに普通に勿体ない)
そんな呑気な事を考えている横で勝手に話が進んでいく。
「…どうして空蒼くんはダメなんだ?トシ」
急に低くなった近藤さんの言葉に怯みそうになったが何とか耐え、言葉を続ける土方さん。
空蒼はそんな様子を見てさっきの二の舞にならないか不安になる。
「…こいつはまだどの隊に入るか決まってねぇ、それなのにお前みたいな奴が他の隊士に出くわせばどうなるか分からねぇんだぞ」
土方さんは空蒼の顔をチラッと見て、含みのある事を言ってきた。
(…?何か…釈然としない物言いなんだけど、要は何が言いたいわけ?)
空蒼は何も分からないまま二人のやり取りを見つめる。
「それは…」
近藤さんは土方さんにそう言われて困った顔をしている。
「…色々と面倒な事になりかねない。誰かの庇護下に置いてからの方が近藤さんも安心だろ」
土方さんが後押しするようにそう言葉を続けてきた。
その言葉がまんざらでもないのか、言葉に詰まっている。