あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした



「…えーと、すみません、貴方の名を聞かせて頂いても大丈夫でしょうか?」

少し困った顔をしながら如月さんが聞いてきた。
そういや彼女の名前を一方的に聞いていただけで、自分の名前は名乗っていなかったなと反省する。

「…朔雷空蒼です」
「朔雷さんですね…えっと、朔雷さんは金平糖の意味をご存知ですか?」
「…意味?」

金平糖の意味。
そう言えば金平糖には意味があったんだ。
小さくて直ぐに作れると思うだろうが、実は手間ひまをかけて作られている金平糖。
それでいて、星型で色の種類も豊富、子供から好かれるキャンディー。
そんな金平糖を空蒼も小さい頃はよく食べていた。
その時に意味についても調べたのだが、昔のことなのでよく覚えていないのが空蒼らしい。

(なんて意味だったっけ……良い意味なのは覚えているんだけど…)

うーんと腕組みをしながら真剣に考える。
総司がその金平糖を近藤さんにあげたところを見ると、余程良い意味なのだろう。

「…貴方が好き」
「……へ?」

考え事をしていた空蒼の耳に告白とも取れる言葉が聞こえてきた。
空蒼は如月さんの目を見つめる。

「金平糖の意味です。貴方のことが大好き、この関係をずっと続けていきたい、そんな意味があるんですよ」
「……この関係を…」

それを聞いて何かを思い出したのか空蒼の表情が少し歪んだ。

『貴方が好き』
『この関係をずっと続けていきたい』

総司は近藤さんが大好きだ、そんなの見てたら分かる。
この言葉を聞くと、あの二人の関係そのものだ。人として、血は繋がっていないけど家族として、近藤さんの事が好きで、この関係をこれからもずっと続けていきたい。
そんな意味が近藤さんの為に買ったあの金平糖にある気がした。

そして自分はなんて愚かな事をしたのかと改めて思った。
総司の気持ちが痛い程分かってしまったから。

空蒼も金平糖の意味が分かった時、"母親"に金平糖を贈っていた。好きという意味を込めて。
もしそれが他の者の手に渡ってしまって、渡す事が出来なかったとしたら、空蒼もきっと総司と同じ事をするだろう。
それくらい金平糖には想いが込められていた。

「……どうやら朔雷さんにもそんな方がいらっしゃるのですね」
「え?」

黙っていた空蒼を見て、どう解釈したのか如月さんがそう言ってきた。
違うのだが違わないので何も言えない。
空蒼にとって総司も新選組も大切なのに変わりは無い。そんな総司を傷付けてしまったのだ、気分はダダ下がりな一方である。

「さぁ…温かいお茶と出来たてのお団子を用意したので、一緒にいただきましょう?」

今更だが、見ると如月さんの手には二人分の湯呑みに入ったお茶とみたらし団子がお盆の上に乗せられてあった。
湯気が良い具合にのぼり、艶のあるお団子に金色っぽいみたらしがなんとも食欲を注ぐ。

空蒼と如月さんは店の奥のお座敷に腰を下ろした。








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