十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。
 恥ずかしさを隠しながらトボトボと歩いていると、前を行くカミロがぴたりと歩みを止めた。

「ではフィーナ、仲を深めよう」

 振り向いたカミロは、なんとフィーナの前へ手を差し出した。
 ……これは、どういうつもりだろうか。フィーナの考えが正しければ、もしかしてだが……

「まさか……手を繋ぐおつもりで?」
「そうだが」
「カミロ様が、私と?」
「スキンシップ、有効なのだろう」

 確かにチェリからはそう聞いた。でも相手は、このカミロだ。それが有効かどうかは分からない。それ以前に、カミロとスキンシップをとってどうするのだ。万が一、仲が深まったとして……一体どうなるというのだ。

 混乱している間もずっと、彼の手はフィーナに差し出されたまま。すれ違う恋人達が、チラチラとこちらを窺っている。
 このまま、カミロに恥をかかせるわけにはいかない。フィーナは戸惑いながらも、彼の綺麗な手を取った。

「お前の手は、小さいな」

 カミロはそう言うとフィーナの手を握り返し、再び花の道を歩き始めた。
 ひんやりとした彼の手が、フィーナを彼の隣へと連れてゆく。前を歩いていたカミロが横に並んで、フィーナはなんとなくこそばゆい気分になった。
 
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