十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。
「あの、すみませんでした」
「なぜ謝る」
「寝不足、私のせいですよね」
「フィーナのせい?」

 彼は面食らったような顔をした。

「花畑なんて連れていったから。私のお相手をして下さって、疲れてしまったんですよね」

 カミロの動きはぴたりと止まり、言葉なくフィーナを見下ろす。

「カミロ様?」
「……そうだな。お前のせいかもしれない」
「も、申し訳ありません」
「一晩中、お前のことを考えていた」

 今度は、フィーナが固まる番だった。
 まさか、カミロにとって自分がそんなにも負担になっていたなんて。一晩中、考え込んでしまうくらいに。

 カミロが生真面目な人間であることは知っているが、相手役として寝不足になるほど向き合ってくれるとは。協力してくれるのはありがたいが、このように生活に支障が出ては困ってしまう。

「そんなに私とのことを考えて下さらなくてもいいのですよ! なにかの『ついで』くらいで構わないのです」
「お前のことを『ついで』とは思えない」

 そうだった。カミロは融通の効かない男なのだ。見合い相手としてカフェに現れた時も本気だと言っていたし、きっと責任感を持ってフィーナの相手役を全うしようとしてくれているのだろう。
 しかし、それが過度な負担となっては……

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