十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。
「ありがたいのですが、それでカミロ様が寝不足になってしまっては心配してしまいます」
「心配?」
「はい。カミロ様が心配です」
「お前、俺のことを心配しているのか」
「は、はい」

 フィーナが返事をすると、なぜかカミロはくるりと背を向けて天を仰ぐ。
 どうしたのだろうか。先程から、なかなか話が進まない。これではせっかくのコーヒーも冷めてしまう。

「コーヒーはどうされますか? 濃いめでよろしかったですよね?」
「お前、俺の好みを覚えているのか」
「まあ……はい」

 トルメンタ伯爵家で十二年間も世話になっているのだ。コーヒーの好みくらいは、皆の分まで覚えている。そんな些細なことなのに、カミロはひどく感激しているようだった。揺れ動く彼の瞳は、喜びを隠せない。
 カミロは両手で顔を覆うと、大きくため息をついた。

「だめだ、どうしてもお前のことばかり考えてしまう」
「ええ……?」
「どうしてしまったんだ俺は」

 また悩み込んでしまった。どうしたものだろう、これではまた今晩も眠れない事態が発生してしまうかもしれない。
 つい先日はフィーナがカミロのせいで寝不足に陥っていたというのに、今度は立場が逆転してしまった。
 フィーナが寝不足だった日は、カミロがベッドに寝かせてくれた。自分も彼の寝不足解消のためになにか出来たらと思うけれど……。
 そう思ったフィーナは、目の端に止まったコーヒーを見て閃いた。
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