十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。
「わあ、フィーナありがとう」
「ありがとうフィーナちゃん、とてもいい香り」

 フィーナはリビングにいたディレットとチェリに、ハーブ店で購入したお土産を手渡した。ディレットにはほんのりお茶が香る上品なサシェを、チェリには彼女らしい甘いブレンドのアロマオイルを。二人はおおいに喜んでくれたが、フィーナの心が晴れることは無い。

「カミロには何を買ってきたの?」
「ハーブティーを買いました。寝不足のようだったので、寝る前に飲んでいただこうと思って……」
「うそぉ! お兄様が寝不足ぅ?」

 チェリは、今朝カミロが寝不足であったことを信じられないようだった。

「あんなに図太いお兄様が、寝不足になんかなるかなあ」
「チェリ、恋の病よ」

 ディレットは意味ありげに、含み笑いをチェリに向けた。その意味をチェリもなんとなく察したようで。

「お兄様もやっと自分の気持ちに気付いたのねぇ」
「遅い初恋ね。カミロも鈍いんだから」

 ディレットとチェリが、カミロのことを楽しげに話している。けれどフィーナは、それをどこか遠くのことのようにボンヤリと聞いていた。

 早く、カミロに会って確かめたい。
 赤髪の彼の言うことが真実なのか、彼の口から聞きたかった。
< 29 / 65 >

この作品をシェア

pagetop