十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。

疑心とハーブティー

 トルメンタ伯爵家に、夜がくる。

 フィーナはガラス製のポットにハーブティーを淹れ、カミロの部屋へと向かっていた。歩く度に、優しいグリーンのお茶がゆらゆらと波打つ。

 街から帰ってきてからというもの、フィーナの心はずっとざわめいていた。

 フィーナの知り得ないところでカミロがやったことは、明らかに縁談の妨害だ。
 正直、ショックを受けていた。しかしカミロが妨害をしなければ、フィーナはあの軽薄な男と結婚していた可能性もおおいに有り得る──
 それを思うと怒るに怒れなくて、カミロの真意を知りたくて……フィーナは長い廊下を歩いた。

 

 カミロは部屋で、寝衣にも着替えずに待っていた。
 フィーナが持ってきたハーブティーをトレイごと受け取ると、彼女を部屋へと招き入れる。

「……手間をかけたな」
「いえ、そのようなことは」

 フィーナは、部屋のソファへと腰掛けた。それを見届けると、カミロも向かいの席へ着く。

 虫の声だけが響くカミロの部屋は、とても静かだった。静かな部屋に、微妙な距離。二人きりの空間に、気まずい空気が流れてゆく。

 街で耳にした話について真相を探りたいが、そのような雰囲気のなかではカミロとまったく目が合わず。どう話を切り出して良いのか分からない。
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