十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。

九番目の見合い相手

 アトミス城横に構えられた、アトミス騎士団本部。
 騎士団の勤務は三交代制で、昼頃や夕方には騎士団本部前が出勤と退勤の騎士達でごった返す。

 その機会を狙って、お目当ての騎士を待ち伏せする女性も少なくなかった。
 そう、今日はフィーナもそのうちの一人だ。



 昼の鐘が鳴り響く中、フィーナは騎士団本部の前で、女性たちの群れの中に立っていた。
 フィーナのお目当ては、つい最近断られた九人目の縁談相手である。彼は、アトミス騎士団の新人だった。

 (もし、彼のところにまでカミロさまが突撃していたとしたら……)
 
 フィーナが見合いを始めた二年前に一人目、二人目と、縁談相手の前へカミロが現れていることは確認済みだ。

 九人全てに確認するとなると流石にフィーナも大変だ。もしカミロから意図的に婚約を妨害されていたのなら、つい最近断られた九人目の彼からもその話が聞けるのではないか――そう思ってここまで来たのだ。

 けれど、フィーナはまだ淡い期待をしていた。
 一人目は軽薄な男だったから。二人目は結婚願望の薄い人だったから。カミロが二人にだけ特別に、釘を指したんじゃないかって。



 終業の鐘が鳴り終わると、騎士団本部の門からは騎士達がぞろぞろと現れた。門で待ち構えていた女性達は、積極的にその群れへとなだれ込む。
 フィーナも若干尻込みしながら、群れに混ざって九人目の彼を探した。

 (……いた! あの人だわ)

 癖のかかった金髪に、目尻のホクロ。同い年の十八歳で、とても話しやすかった。初めての縁談で、緊張していると言っていた。
『……僕には、君とやっていく自信が無いんだ』
 ついこの間そうやって断られた、あの彼だ。

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